~第99回 読書会開催記録~
この日はコロナウイルスの影響もあり、久々に3人という超少人数、かつ2回目以上の方もいない完全に全員初めましての会となりました!新鮮かつ刺激的で非常に面白かったです。話もかなりヒートアップしました。
今回紹介いただいた本の概要になります。
1.僕はミドリムシで世界を救うことに決めた 著:出雲 充
主催は皆文系出身で、理系の生物分野、バイオについては全くの素人なので、ネットで拾った情報になりますが、本書のタイトルにもある「ミドリムシ」という生き物は、5億年前に地球に誕生したそうです。植物と動物両方の性質と、59種の栄養素をもつ冷静に考えるとめちゃくちゃ凄い特殊な生物です(笑)。全長は0.05mmで、世界の食糧、環境、エネルギー問題といった、最近話題の「SDgS」で取り上げられている問題を解決する大きな可能性を秘めているというものです。
本書は、東京大学初のバイオベンチャーと言われている「ユーグレナ」を起業した著者の波乱万丈ストーリーです。彼は東京大学在学中にバングラデシュを訪れ、深刻な貧困に衝撃を受けたそうで、「世界から飢餓をなくす」ための切り札となるような、魔法の食べ物を探した結論が、ミドリムシだったそうです。
しかし、当然これだけの可能性を秘めていたミドリムシなので、最初に目をつけたのは彼ではなかったようです。「国家レベル」で、緊急時の食糧や国産エネルギーを賄おうというプロジェクトは行われていたことがありました。しかも1980年代です。しかし、20年間膨大な予算をかけて研究をし続けましたが、結局失敗に終わり撤退していたようなんですね。そんな中、彼は東大を卒業後に入った銀行を一年で辞めたうえ、国ですら上手くいかなかったミドリムシの培養に人生を賭ける決意をします。バイオの分野というのは、化学の分野でもとりわけ資金力およびデータ量が膨大にかかる分野であることでも知られ、世界でも有名な大学が国家と手を組んでやっと押し進められるものだそうで、それを一個人が0から始めることがいかに凄いことかが分かりますね。
起業後は当然困難の連続でした。しかし彼は様々な挫折、逆風を乗り越え、遂に世界初のミドリムシ大量培養に成功するんです。現在はミドリムシを燃料としたジェット機の離陸を目指しているそうです。彼の至言は、「この世にくだらないものなんてない」です。そんな若い起業家のマイストーリーです。起業を目指す人など、モチベーションを高めたい方は必読です。最近は東大のある本郷周辺にアメリカのシリコンバレーをもじった「本郷バレー」なるものができていて、学生ベンチャーが盛んになっているそうです。彼が起業したころは、考えられなかった光景だそうです。まちがいなくベンチャー文化、起業ブームを世に広めた第一人者の一人です。
2.新規事業の実践論 著:麻生 要一
タイミングよく、起業したい方向けの本が続きます。この本はまず、自分の所属する会社を冷静に見つめ直すところから切り込んでいます。まず、企業の中にあるほぼすべての仕事(経理、総務、法務、企画など、一般の日本企業にあるような部署単位の仕事を指します)はそれがどんなに花形、見かけはカッコいいような仕事であっても、そこに所属する個人が定年を迎えるころにはほぼ確実に価値がなくなる仕事です。最近騒がれている、「AIに奪われる仕事」というテーマもありますが、これは現実のものになるということです。要するに、企業が存続するための仕事は、実際に働く個人1人ひとりの未来にはつながらない仕事になっていると本書では冒頭にバッサリ切り捨てています。
ではどうするか??日本はサラリーマン社会があまりにも長すぎたためか、アメリカや中国といった国ほど、起業に対しては前向きではない傾向があるそうです。中国は基本国策などの政府主導で経済を回していますが、資本経済の日本では難しいようです。また、アメリカのようにスタートアップが日本で盛んにならない背景には構造的な理由があるそうです。それはサラリーマンが「守られすぎていること」。終身雇用が終わりかけているという経団連の発言があったとはいえ、簡単に従業員を解雇できない仕組みは未だ顕在ですから、サラリーマンは会社を辞めてまで起業しないのが最適戦略であることは言うまでもないんですよね。ただし逆にいえば、労働者は「どれだけ失敗しても生活が揺らぐことはない」ということも言えるんですよね。その安定感こそを武器にすることができるはず。日本における大企業の影響力は良くも悪くも凄いものがありますよね。まだ大企業信仰がなくなったなんて口が裂けてもいえません。よって結局新しいテクノロジーやビジネスを社会に出そう!となったときに,一番強いのはまだ(少なくとも日本においては)大企業であるといえます。
本題に戻ると、本書は冒頭のように、日本人には新規事業は難しいのか??海外のイノベーションの前にただやられるしかないのか??、ということを論じているのではなく、本書では、日本人は普通の企業より「社内起業」が向いているという旨が強調して書かれています。これは、会社内で新規事業開発を行うということと同義です。社内起業は、唯一企業の未来と働く個人の未来が一致する仕事といえるのです。そこで身についたスキルや知見を定年後にも活かすことが可能です。言い方はあまりよくないですが、会社の金を使って大きなチャレンジができるのです。ベンチャー企業などは当たり前にこういった働き方が成立していますが、今後資金の潤沢な大企業でも多く取り入れられると思います。最近では、パナソニック、日本郵政などが社内起業に積極的に動いています。100年生きる時代だからこそ、サラリーマンもついに自分自身の老後のために新規事業に取り組む時代が来たということですね。
3.月の満ち欠け
2017年上期に直木賞を受賞した佐藤正午さんの著書ですね。以下最初のあらすじになります。
物語は3人の男性の視点が順に入れ替わりながら進んでいき、そして3人が共通して関わる一人の少女が登場します。主人公の一人、「小山内堅」彼は高校の後輩でもある「藤宮梢」と交際を始め、遠距離で交際を続けながら、やがて二人は結婚。梢は妊娠。生まれた女の子は「瑠璃」と名付けられた。これは「瑠璃も玻璃も照らせば光る」という格言に基づき名付けられた。この「瑠璃」という名前とこの格言は物語において重要な意味を持ってきます。幸せな生活がしばらく続き、瑠璃が7歳を迎えた時、彼女はひどい高熱を出して寝込んでしまいます。一週間たっても熱が下がらず原因が分からなかったが、一週間が過ぎると何事もなかったかのように突然良くなりました。この直後から瑠璃には奇妙な異変が見られ始めます。
この本、まさに前々前世です(笑)。気になる方は読んでみて下さい。
いかがでしたでしょうか??
3月はテストとかを終えて暇になった大学生、4月は新社会人の方の参加が増える傾向があります(笑)。文化系の社会人サークルに興味があるような方も、単純に人と喋りたい方も全員大歓迎です!